紀要 第1号(2026年8月2日発行)
創刊の辞 ― なぜ我々は面白くないゲームを研究するのか
本紀要の創刊にあたり、当研究所に最も多く寄せられている質問にお答えしておきたい。すなわち、「なぜ、面白いゲームを作らないのか」である。
1. 面白いゲームは、放っておいても誰かが作る
面白いゲームには、作る動機がある。売れる。褒められる。遊ばれる。動機のあるものは、研究機関が手を出さずとも世に出る。国費(出所不明)を投じて研究すべきは、誰も作らないもののほうである。
当研究所は設立以来40余年、この方針を一度も変えていない。結果として、面白いゲームは一本も発表していない。設立目的に照らして、まったく正常である。
2. 「クソゲー」は、雑に作られた結果ではない
ここに、当研究所と世間との最大の見解の相違がある。
世間は、クソゲーを「失敗作」と呼ぶ。しかし当研究所の立場は明確である。雑に作られたものは、ただの雑な製品であって、研究対象ではない。操作が効かない、読み込みが終わらない、スマートフォンで開けない——それらは不具合であり、当研究所の成果物には存在しない。
当研究所が研究するのは、正しく動作するにもかかわらず理不尽であるという状態である。これは偶然には発生しない。設計しなければ、決して発生しない。
本研究所の成果物に不具合は存在しない。存在するのは、意図された理不尽のみである。
3. 被験者は、なぜ最後まで遊んでしまうのか
当研究所の中心的な問いはここにある。理不尽であると理解しながら、なぜ人は手を止めないのか。なぜ「もう一回」と言ってしまうのか。なぜ、それを他人に見せたくなるのか。
この現象は、単なる娯楽の失敗では説明できない。むしろ、娯楽が成立する条件を裏側から照らし出している。当研究所が理不尽設計研究部門を中核に据えている理由である。
4. 品質は、譲らない
理不尽の研究において、品質は前提条件である。動作が重ければ、被験者は理不尽に到達する前に離脱する。それでは実験にならない。
ゆえに当研究所は、読み込み速度、操作の応答性、スマートフォンでの動作について、一切妥協しない。品質保証室が全成果物を検証し、「検証済」印を発行する。40年間、不具合ゼロを維持している(維持していることになっている)。
5. Web実験部門の発足について
2026年、当研究所は「全国民がスマートフォンで被験可能な実験環境」の構築を目的として、Web実験部門を発足した。インストール不要、無料、その場で実験参加可能。研究成果物は順次、当サイトにて公開する。
第1号成果物 KSG-001 は、現在、倫理審査委員会の審査中である。なお当委員会の承認率は設立以来100%であり、審査は様式である。
諸君の実験参加を、心よりお待ち申し上げる。
今年も、誰にも頼まれていない研究を続けてまいります。